絵のはなし

超美麗!小畑健展「NEVER COMPLETE」の感想

2019年8月10日

こんにちは、もとみんです。

世間は夏コミですが、わたしはおととい小畑健先生の原画展に行ってきました!

漫画好きな人はもちろん小畑先生のことをご存知だとおもいますが、漫画家には詳しくない…という方でも師匠の絵はご存知でしょう。

いままで「ヒカルの碁」「DEATH NOTE」「BAKUMAN」などがアニメ化していて、デスノにいたっては実写映画にもなったので一般的にかなり知られていると思います。

そんな人気作品の数々の作画を担当された小畑先生ですが、今回は画業30周年を記念して初の原画展開催とのこと。これはもう絶対いきたい!と思い、東京での開催がおわるまえに行ってきました。今回はその感想なぞ書いていきたいと思います。

 

開催概要

画業30周年記念 小畑健展 NEVER COMPLETE

  • 会場:アーツ千代田 3331
  • 東京都千代田区外神田6丁目11-14
  • 会期:2019年7月13日(土)~8月12日(月・祝)
  • 開場時間:午前10時~午後5時
    ※毎週金・土曜日と7/14(日)、8/11(日)は午後8時まで延長
    ※最終入場は、閉場の30分前まで

 

 ↓小畑先生のインタビューです。初の顔出しだそうです!

 

‘Death Note’ artist Obata’s 1st solo exhibition held in Tokyo

 

漫画制作環境はアナログ!漫画の生原稿が超美麗だった

小畑先生といえば「画力が高い」イメージがありますが、実際に生原稿を見てみたらも~ほんっとに美麗でした! 美しすぎる!!!

漫画の原画はかなりの点数が展示されていて、そのままストーリーを読めてしまうくらいの量。漫画を描かれている方は特に見応えあると思います。

実際、原画を間近で下から見ている方がすごく多かったので、おそらく絵師さんがかなりいらっしゃってたんじゃないかな?と思います。

小畑先生はアナログ環境で作画されているようです。

アナログ原画の良いところは、ホワイト修正の跡がくっきりわかったり、写植がリアルに貼付されているのが見えたりするところです。デジタルだとこういう手作り感がないから、アナログならではだなぁと思います。

あと、ベタ部分のツヤの違いで画材の使い分けがわかったりするところが結構おもしろい!

ベタって、墨汁と筆ペンとマジックとで、塗った後のツヤが違いますよね。だから例えば、髪の毛先は筆ペン、それ以外は違う画材でガシガシ塗ってるな~というのがわかって、作画環境とかがむくむく想像できていい♪ 

小畑先生の生原稿はとにかく緻密な感じがしました。

デジタルだと1ページあたりのコマ数が比較的少ない&背景も少ない印象があるんです。だから全体的に白くてコマ外の余白とコマ内の風景が同化して見えて「おお、2次元だなあ」というかんじがするんですが…(※個人の感想です)

でも小畑先生の場合は、コマの中が緻密で整った印象なので、3次元の映像の一部を切り取ったような雰囲気がしました。コマ外の余白とはキッパリ世界が違うっていう雰囲気。これは描写がリアルだからかもしれません。

 

個人的に発見だったところ

▲チケットはこんなかんじ♪

 

個人的に「なるほど、こうすればいいのか!」と発見になった部分は、擬音(?)の部分です。漫画にはドゴッとか、キィィィーンとか、ドンッ!とかいろいろ擬音が入るけど、その部分を絵の上から書いてるような雰囲気だったんですよね。

下描きの時点でどこに擬音を入れるか決めている場合は、その部分を避けてペン入れすることもできますよね。でも原画を見ていると、絵の上に黒で太めに擬音を書いて、黒の中をホワイトで抜くという感じの仕上がりだったんです。

見開きページとかのデカい擬音はもともとそこを避けてペン入れしている感じでしたけど、細かいところは後で加えてるかんじ。(時と場合によるかもしれないけど)

これって良く考えたらデジタルのやり方と一緒なんですよね。

デジタルだと自動で白抜きしてくれる機能があるから、たぶんほとんどの方はラストに擬音を入れると思います。レイヤーが別なので、もし絵に被りすぎても位置調整できるので便利ですね♪

けどアナログはそういう便利機能がないので、いくらホワイトがあるとはいえ基本一発勝負! そう考えるとやっぱアナログでこの画力はすごすぎる…!

あと、よく影部分にサッサッと斜線を入れたりするじゃないですか? そういった細部の影の線がけっこう均一で綺麗でした。こういう細部の丁寧さが完成したときの美麗さに繋がってるんだなあと納得!

ネームやラフ画も展示されていたのですが、それを見る限り意外と太い線で描かれているなという印象でした。いわゆるシャーペンみたいに細かさではなく、どっちかというと鉛筆みたいな…シャーペンでも濃くて芯が柔らかいかんじのものなのかな?と。

あと、小畑先生は裏描きしているらしいです。

右利きの人だと右向きの顔が描きづらくなりますけど、そのとき原稿用紙の裏に左向きの顔を書いてトレース台で照らすとうまく右向きが描けますよね。

これは昔ながらの手法だと思うんだけど、小畑先生の場合は背景のパースとかも描いていることがあるそうです。

なんでも精度を上げるためだとか…丁寧さが溢れている!

 

さらに丁寧なカラーがすごかった 

個人的にすごく感動したのは「カラー漫画」の原画です。

 

もう~めちゃくちゃ丁寧!!(*゚Q゚*)

 

最近はデジタルで簡単にカラー漫画がつくれるけど、アナログで塗ったカラーなのにすごく細かくて美しかった! カラー口絵やカバーを気合入れて着色するのだったらわかるけど、漫画部分でもあそこまで丁寧なんだなあとビックリです。

漫画以外のカラーイラストもたくさん展示されていたんだけど、こちらも「おお~!」と感動しきりでした。

個人的にビックリしたのは、「プラチナエンド」という作品のカラー原画の展示。小畑先生は基本アナログ制作で、着色はコピックを使っているようです。コピックであの繊細な濃淡だせるのはすごなあと思うのですが、それよりも驚いたのは線画!!!

「プラチナエンド」以降はデジタルも利用しているようなのですが、どうやらアナログで着色して、そこにデジタルで効果を付けたす、という使い方をしている模様。

 

プラチナエンド 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

↑展示されていたものとは違うけど、プラチナエンドのこの表紙を見ると、輪っかの部分とか背景のキラキラとかがデジタルですよね。

アナログとデジタルの不思議な融合!(*´∀`*)

 

作業工程としては、

 

ラフ → 線画 → アナログカラー → デジタル追加

 

というかんじなのですが、この線画がまたすごいんです。

 

もう…ほとんど線がなかった!!!

しかも線部分がめっちゃ細かった!!!

 

ラフのときにはあった線が、線画になるとなくなっている。その上ガイドとなる線もいれてない。ということは、完成形が頭の中に入ってるってことですよね。

確かに線がなくても色の濃淡で表現はできますけど、はみだしたりしたらもう大変じゃないですか! しかもアナログのカラーって修正きかなくないですか? モノクロだったらホワイトかければいいけど、カラーは大変すぎる…!

絵描きなら誰だって完成図くらい頭に入ってるでしょ?と思われそうですが、わたしの場合はおおまかだけ決めていて、それ以外の部分は試行錯誤するというパターンも結構多いです。

なので細かく決めていない場合は、最後の最後で「こっちのほうがいいかな? でもこっちのほうがいいかも!?」と悩みまくることもしばしば…;

それにしても、プラチナエンドの絵を初めて見たとき、「塗りはアナログ感があるけど明らかにそれ以外の彩度がデジタルだよな…ってことはデジタル画なのかな?」と謎に思っていたので、疑問が解消されて良かったです♪ 

 

小畑健画集「blanc et noir」 (愛蔵版コミックス)

 

作品ごとの絵柄の違いとルーツ

この原画展ではいろいろな作品の原画が展示されていて、わたしの知らない作品もありました。「あやつり左近」はコミックスを買っていたので、見たとき「うわ~懐かしい!このネタ結構好きだった!」と興奮しましたね。

わたしが初めて小畑先生を知ったのは、貴花田&若花田を描いた漫画「力人伝説」でした。

相撲には興味なかったんだけど、絵がめちゃくちゃ綺麗だな~!と思って目が釘付けに。それが最初のイメージだったので、それ以前の絵柄は良く知らなかったんです。(ちなみに力人伝説の原画はなかったです。利権の関係かな??)

で、今回この原画展で初期の「CYBORGじいちゃんG」の原画もあって、それを見たらハッと気づいたことがあって。初期なせいか絵がけっこう違うんだけど、誰しも絵の系統ってあるじゃないですか? 

その絵を見たらですね、なんかこう…「シティハンター」で有名な北条司さんとか思い出して。

そういえば昔のジャンプって、写実的というのとはまた異なる、濃くてアダルティでリアルな絵が多かったですよね。「魁男塾」とか「ろくでなしブルース」とかもその系統だと思うんですけど、小畑師匠もルーツはそのタイプなのかな?って思って。

どんな漫画家さんも写実的なデッサンみたいな絵を描かれるとめっちゃうまいんだけど、それにしたって昔のジャンプの「濃さ」はまた別の特徴だと思うんですよ。なんか昔の小畑先生の絵を見たら、そういうものを感じて、妙に納得しました。

でも、そもそも作品によって絵柄を使い分けているようなので、そのときもただの使い分けだったのかな? そうだとしても、なんでも描けるってすごいです!

 

転機は「ヒカルの碁」、「DEATH NOTE」はずっと描き続けられる作品

順路のラストあたりに先生のインタビュー映像があって、それによると中学のときに漫画家になろうと思ったらしいです。そう思ってからは毎日自分に課題をだして絵を描いていたそうです。

転機となった作品は「ヒカルの碁」で、このとき先生は「ジャンプって自分の絵でも通用するんだ」と思ったのだとか。えーもうすでにデビューしてるのに!?って驚きましたが、そこはやはり競争の激しいジャンプだからなんですかね。

「DEATH NOTE」は、自分の好きなものを好きなようにかけた作品で、先生にとっていつまででも描き続けられる作品なんだそう。デスノってわたしにとっては、ゴスロリを一般に普及させた作品というイメージがあるんだけど、もしや先生はあの雰囲気とかお好きなんでしょうか。

描きおろし(?)のカラー原画にも「これもうV系ホイホイだな!」みたいな絵があったので気になりました。ちなみにこれも超美麗。

そうそう! DEATH NOTEについては新作漫画の一部も展示されていました。舞台は2019年とのことで、何だか気になる展開になっていましたね。特に詳しい情報は載っていませんでしたが、これは読み切りなんでしょうか?

ちなみに、先生のインタビューを見ていて超絶共感するところがあったんです。なんでも先生は描き直しが多いらしいのですが、その理由についてこう言っていました。

ラフ、下書き、ペン入れと3回も同じ絵をかくので飽きてくる。だから新しいものが描きたくなって描き直したりする。

 

わかるうううう!!!!!!!

 

もう~これずっと思ってたんですよ!

 

同じ絵を3回もかくって飽き性のわたしにとってはかなりキツいんですが、今まで漫画を描くということに対しそういうことを言っている人を見たことがありませんでした。

絵を描く人はその作業自体を愛してるのだろうから、きっとそんなクレームを出すこと自体許されないんだろうな…と思ってたんですよ。精度を高める作業なんだから当たり前だろ!と。きっとみんなそう思っているに違いないと思ってた…

けど先生が言ってくれた! しかも小畑師匠レベルの方が!!

もうそれだけで救われた気分!!!!

しかし、先生がこんなふうに言うのは、もちろんわたしの飽き性レベルと同じはなしではないです;;

なにしろ、あのレベルの美麗絵を描いているのに「もっとうまく描けたらな…と今でも思う」とおっしゃるのですから…それ以上うまくなってどうするのですか…!

この言葉を聞いたとき、ふと、同じくジャンプ系で活躍されてる桂正和先生のことを思い出しました。

桂先生はこれまたリアルで綺麗な絵を描かれる方だけど、以前「TIGER&BUNNY」(※桂先生がキャラデザ担当)のイベントだったか、もしくは画集だったか、どっちか忘れたのだけど、「ぼくは絵が下手だから何回も描き直す」って言ってたんですよ。もう耳を疑いましたよ。桂先生レベルが下手だったら全俺が泣くわッ!!!

そういえば余談だけど、桂先生のラフスケッチはかなり雑然とした感じだったんですよね。もうグリグリ書き殴るみたいな。そこから綺麗な一線を作り上げていく、みたいな。

そこからすると小畑先生のラフは、いっぱい線がかいてあるのになぜだか淡い印象だった…なぜだろう?

そういえば小畑先生は整った顔が好きらしいです。逆に、感情むきだしで整った顔が崩れるのが苦手だとか。

これは展示のパネルに書かれていたことで、そういうこだわりがあるから綺麗な絵を描かれるんだろうなあと納得。これはやはり、こだわりなんだろうなと思いましたね。

 

会場のショップで複製原画が購入できる

▲EXITの向こうにあったパネル。撮影するのに並んだ…!

 

ちなみに木曜日という平日の閉場間際にいきましたが、それでもかなり人が入っていました。男女ともに多く、年齢層はやや高めの傾向でした。

展示物はさすがに撮影禁止だったのであの感動をじっくり思い返せないのが残念ですが、原画展の図録が売っているので、それを購入すれば今回の展示物を振り返れます。

そうそう!そういえば複製原画が1枚1080円で売っていたんですよ!

漫画家ならではのグッズ(?)だなあと思って感動しましたね(*´m`*)

ジャンプの複製原画って恐らくそうそう手に入らないと思うので、ほしい方は買っておいたほうがいいかも。

 

小畑カスタムで絵を描いてみた!

小畑先生の美麗絵に触発されて絵を描いてみました。今回は小畑先生の絵を参考にしています。

 

 

まず、いつもの感じで描いてみて…

そこから小畑先生の絵を参考にしながら細かい処理をしていきます。

 

すると……あ~ら不思議!!!

 

簡素でいまいち線が少ないなあ…と思っていた絵がここまで進化!

てかここまでやらないといけないのか!(;∀;)

(※けっこう手間がかかります)

 

 

いつも影の線を適当にサッサッと書いているのだけど、小畑風カスタムで丁寧に入れてみたら、かなり印象が違いました。ここを丁寧にやるだけでもキレイに見えそうな気がしてきた…!

ペン入れの線は、基本細めで強弱がすごい入っているかんじ。アナログならではのカッコいい強弱なんですが、ペンタブの設定をかえればデジタルでもなんとかできるかも。もしくはソーマの佐伯俊先生のように線幅修正で一部だけ太くして強弱つけるか…。

個人的に細い線が描けない人間なので、これはマネできませんでした;

あと、小畑先生の絵はベタとホワイトが効果的に入ってますよね。普通に影部分にベタ入れるだけじゃなくてなんかセンスあるんですよね…わたしが一番憧れてるやつ!

頑張ってマネてみたけどうまくできなかった。難しいなあ~、、

 

 

あと目ですが、よくよく見るとそこまで特殊なことはしてないんですよね。でもキレイなんだよなあ…目の輪郭がキレイなのかな? あと目全体の位置とかもあるかも。

たぶん基礎的なデッサンがうまいからしっくりくる、というのがありそう。自分の絵はちっともしっくりこないがなッ!

 

 

せっかく描いたので、さいごに1枚のイラストにしておきました。普段より数倍、作業が細かかったです。小畑先生はあれだけ丁寧なのに筆が早いと知り、正直驚愕してます、、!

でも今回「あ、ここってこう描けばいいのかも?」と思ったところがいくつかあったので、今後がんばって取り入れてみたいなあと思います(*´∀`*)

 

やっぱり小畑師匠の絵は最高だった

そんなわけで、小畑健展の感想なぞでした。世の中には画力の高い人や絵がうまい人がいっぱいいますし、デッサンが整っている人も多数いますけど、小畑先生の絵はなんかアート感があるなあと思います。

いやはや、原画展ってやっぱいいですね。個人的に漫画の生原稿みるのが大すきなので、好きな作家さんにはぜひやってもらいたいです。佐伯俊展もやってほしい!

ではでは、また、、

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